雪国 vol.59
雪囲いを外す時の気分は、ちょっと他に比較できないものがある。
4ヶ月以上もの間縛り付けられていた縄を切った瞬間、裸の枝々が「ああ、窮屈だった~」と言いながら太陽に向かって伸びをする。止まる場所が増えた小鳥たちは、柔らかい風に揺れる細い枝先でブランコを始め、家の中が急に隅々まで光にあふれる。0度Cの真っ暗闇で眠っていたメダカたちが、活発に動き出し、子供たちが水辺をのぞきこむ。
雪囲いを外す瞬間。それは雪国だけの特別のわくわく感。
桜の開花もまだ先で、森には雪がいっぱい残っている。山菜はやっと最初の気配があるばかり。その頃が、一年中で一番幸せな季節のような気がする。
雪囲いを外すのは、すっからかんの青空の日がいい。